ささやかな自慢

ちっさい人間なので、酔った勢いで、少し自慢話させて下さい。


今日、自分の職場(現場)の打ち上げがありました。


残業で、予定より2時間遅れての参加でしたが、到着するなり、すでに出来上がった男ばかりの6名に、抱擁と握手で迎えられました。みんなどちらかというと、不器用で口数は少なく、こだわりが時に頑固ととられることもある、職人気質の愛すべき男達です。


2年、タイで仕事をして来て、片言でもタイ語をしゃべれるのは、彼らの存在があったから。中国トレーニーの時に経験した、たどたどしくても、幼稚であっても、自分の持ってるボキャブラリーで考えを直接伝えること。それをタイでも実践してきました。


日本の現場のおじさま達と同じように、彼らも決して、英語が得意な訳ではない。けれど、最年長のリーダーから「I love you」「I love my job」「I work for you」と言われた瞬間、ぐっとこみ上げるものがありました。今さらながら、年齢を聞かれ、もう2年も一緒に仕事しているのに「友だちでいいか?」と聞いてくる(笑)。


またもう1人のリーダーからは「very good」と言われた。実は、半年ほど前に、1つのエピソードがありました。


ある会議で、不具合事象が議論されました。数量不足が発生し、ある方(マネジメント)から、部品を払い出した私の部門が疑われました。タイ人スタッフはおとなしく聞いていたので、会議では我々のミスとの結論に傾きました。


僕は疑われた側のマネージャーですが、それ以上に、製造業に携わる1人として、納得できませんでした。
理由は簡単で、その部品は左右同数づつ、お茶碗のように重ねるので、手作業カウントに加えて、積み重ねた高さでも左右同数を目視確認できる(変な例だけど、回転寿しの空いた皿を積み上げれば、たった1皿でも、差が分かるのと同じ原理)。


また、形状の違いから、L側の上にR側は積み重ねできず、その逆もしかり。物理的に同じ部品しか積み重ねできないから、L・Rの混在はない。だから、片側だけ数量不足という状況は考えづらい。別の要因ではないか、というのが僕の主張でした。


この発言後、議論の流れは変わり、最終的に原因は他部門だと分かりました。皮肉なことに、冒頭で疑いをもたれたマネジメントの方の部門でした。この会議での濡れ衣が彼の中では悔しかったのでしょう。僕の方は、もう忘れてましたが(笑)。


彼がこのエピソードにこだわるのは、裏返せば、自分の仕事に誇りとプライドを持っている、ということだと思う。


僕は、やるべき仕事を済ませた上で空き時間があれば、モラルの範囲でサボっても(=無理に仕事のフリをしなくても)良いと思う。そのかわり、自分が決めた仕事の基準に妥協し、甘えて、手を抜くことは許されないと思う。人間は時にミスをする。それは仕方ない。でも、手抜きが原因のミスは許されない。


職場のスタッフたちは、己の決めた仕事の基準に対して、手を抜く人間ではないと思う。サボる(ゲームや昼寝をするという意味ではない)ことはあっても、手抜きはしないと思う。これは僕の直感。万が一、彼らが失敗した場合、深く頭を下げる(これが仮に僕の溺愛で、失敗では済まない重大事象が起きた場合、僕はマネージャー失格で、不適格な人物には帰任が筋だろう)。


さて、もう1人のリーダーは、打ち上げに来ていない女性メンバーについて話し始めた。彼女は明日から有休を2日取る。事前に有休カードが出てるし、サインもして会社的な手続きは完了している。リーダーの話では、彼女は(胸部にメスが入る)手術を受けるらしい。


彼の提案を受けて、女性メンバーと5分ほど電話で話した。彼女にとって、内心すごく不安な夜だろうと思う。互いにこの話題に触れないまま来週を迎えることもできたのだろうけど、やはり電話をして良かったと思う。リーダーの判断力と心遣いには、他人の痛みを慮れる大人の優しさを感じた。


他に2人の若手はとても愛嬌があって職場のムードメーカー的存在。リーダー格にもツッコミをしたり、風変わりなリアクションをして、メンバー一同、つい笑ってしまう。珍しくジャケットを着ていったら、ファッションショーよろしく、みんなが次々にそれを羽織っていく。堅苦しいのでYシャツも脱ぐと、それも羽織っていく。最後には、腕時計もそういう運命に。


なんだか、非常に愉快な気分だった。というのも、職場ではこちらが上司で年上ということもあり、いつも丁寧で、真面目で、一定の距離を置いたようなところがあるものの、今晩の彼らは、まるで子供のように天真爛漫で、欲しいものには素直に反応する無邪気さを感じたから。


もう1名、別の職場から、うちのメンバーとよくつるんでいる顔見知りの男が来ていた。話してみると、やっぱり「類は友を呼ぶ」というか、律儀で、情熱があり、チームワークを重んじる人物だった。そして彼は、仕事での僕の考え方や行動も理解してくれている様子だった。


グラスのビールが少しでも減ると、すかさず注いでくれるので「自分でやるから大丈夫」と言っても聞かない。このため、到着後、ビールを延々と飲み続けていた(笑)。身体はいい気分で酔いが回るのを感じつつ、律儀な彼への感謝、メンバーとのアツい話で、頭の中は興奮して酔っ払わない2時間半となりました。


結局、日付が変わる頃に帰宅してそのままソファーで寝てしまい、朝目覚めてこれを書いてます。まだ、酔いが残ってます(かなり)。


仕事や、仕事の人間関係について書くのは極力控えてきました。スタッフの成長に触れて嬉しかった時も、我慢して書かずに来ました。でも、今回、本当に嬉しい。なぜならば、僕自身、理想としていた姿に近づいてる気がしたからです。


高校時代から、僕の理想像は、こんな感じでした。


『己を高め、可能性を広げ、自分も周囲も笑顔にできる人物になりたい。』


『目の前の現実を、少しずつ、でも、確実に変えられる人物になりたい。』


そして『辛い状況でも逃げずに、男から惚れられるような男になりたい。』


まだまだ未熟で、自惚れるには百年早いと思いますが、どうぞ大目に見て下さい(笑)。